
ただ今、脳の本を読んでいるのですが、心に止めておきたいのでここに書いときます。
『脳にとっての”報酬”とは』
脳にとっての『ごほうび』とはどんなものなのでしょうか。
ごほうびや報酬というと、『自分に何かしらの利益をもたらすこと』というふうにとらえがちですが、
脳にとってのごほうびは、利己的な損得の判断よりもっと広く、奥深いものです。簡単に説明すると、
『うれしいと感じること』ということになるかもしれません。これは、自分の役に立つことだけでなく
目的や目標を成し遂げたり、人の役に立ったりすることが脳への報酬となることを意味しています。
脳神経細胞がもつ3つの本能を思い出してください。脳には生まれながらにして『生きたい』『知り
たい』『仲間になりたい』という本能があります。このうち、『仲間になりたい』という本能は、脳に
『人が喜ぶことが自分にとっても嬉しい』と感じさせます。つまり脳は、人のためになるとき、貢献心
が満たされるときに、それを、『自分にとっての報酬である』ととらえて、機能するようにできている
のです。
もっとも、人間は置かれた環境などによって貢献心を失い、損得ばかりを重視するようになることも
あります。これは、人間の脳が記憶に基づいて働くためです。
例えば人と比較して勝ち負けにばかりこだわったり、子供の頃から何事につけ勝つことを強いられて
いたりすると、負けたときに罪悪感を抱き、『他人を蹴落とさなかったので自分を守れなかった』とい
うエピソードが記憶として残ることになります。すると『自己保存』のクセが働いて、『他人を蹴落と
してでも自分を守りたい』『自分だけが得をすればよい』という気持ちが生まれてしまうのです。いわ
ゆる“損得勘定”は、脳が生まれながらにしてもっているものではなく、後天的に身についていくものと
いえます。
競争の助長は、脳が機能するまでの貢献心を、損得勘定にすり替えている傾向があります。当初はもっ
ていた貢献心が『負けるのではないか』という思いにより、なくなってしまうのです。その意味で、い
きすぎた成果主義は、本来脳が持っている力を削ぐことになりかねません。
実際、みなさんにも思い当たるふしがあるはずです。『自分さえよければいい』という人よりも、損
得にとらわれず『あの人の喜ぶ顔が見たい』『この人のためにがんばりたい』と思える人のほうが、結
課的にあらゆる面で力を発揮しているでしょう。
これは、脳のしくみから説明できることなのです。社会に貢献しようと言う気持ちで自己報酬神経群
を働かせるほうが、自分のことだけ考えるよりも、脳にとって『よりよいごほうび』となります。さら
に、自分だけでなく広く他人を思いやれることは、それだけ期待できるごほうびを増やすことにもなる
のですから。
photo by masumi