2008-11-25

素敵な人



うちのお店には私にとって
時として、すごく素敵なお客さんが来てくれる。
彼女は東京と福岡で仕事をしている女性(ひと)。
美しくって、
いっつも素敵な帽子をかぶってやってくる。
カウンターごしに話をしているとボーッと見とれてしまう。
やっぱり目の前で話す人は
見た目に美しいに限る。
美人は三日で飽きるなんて誰がいったんだろう?

私よりかなり年上の彼女は
もちろん博識で
でも、私よりとっても少女だったり
変なところで世間知らずだったりする。
だからよけいに
年下の私なのに
可愛いなこの人って思ってしまう。

そんな彼女と
いろんなお話をする。
時には経済のこと、政治のこと
哲学的なこと、恋愛のこと、家族の話
それは様々。

彼女がすごくうれしいことを言ってくださった。
私がひとりで行けるお店は
福岡ではマコちゃんのお店で
東京ではT.Jさんのお店くらいしか無い…
へ? T.Jさんのお店って
あの映画にもなったことのあるお店を経営する方のお店。

その東京のお店で彼女は
とても素敵な人に出会ったとお話ししてくれた。
世間では、あまりいい人で通っていない方なのだが
(T.Vにも出るような方)
対面してあってみると
全く違う人格の人だったと。
そして、すごくオーラを感じたと。

ある人が教えてくれました。
オーラってのは当の本人が発するものではなく
ある人を見て、見たその人が感じるものだと。
あぁ、そうなのかも…
と思いました。

年に何回かの彼女の来店は
ある決まった曜日の夜遅く。
常識人の彼女は
どうしても今日そっちに行きたいんだけどと
連絡をくれる。
毎回、楽しい話しができるコトは分かりきっているので
どんな時間になろうとも
彼女が来る日は店の灯をともして待っている。

お店って
素敵な人たちによって
育てていってもらってると
頑なに信じているから…

2008-11-18

武士のこころ


昨年幕末の情勢に興味を持ち、
中でも吉田松陰の生きざまに魅了された。
幕末の武士。
春に行った荒立神社で神主さんがしきりに私に棒術の話をされた。

近所の先生が、
すぐ近くの小学校の体育館で今度から開講しますよと
初夏に誘ってくださったのをかわきりに
古武術の棒術を少し習っていくことにした。

この歳になって
こんな風な習い事をするなんて夢にも思っていなかったのだが、
やってみると奥が深い。
稽古場では周りに段持ちのきりっとした諸先輩方々。
なんともかっこいい。
お稽古が始まるとなんとも気持ちが研ぎすまされ
精神が統一されだす。
以前習っていたお茶とおんなじ。
悩みや私的な考えはいっさい吹き飛ばされる。

さてこの武術がすこ〜しおもしろくなってきたところで、
剣の達人のことが少し知りたくなってきた。
本屋さんへ行ってうろうろ。
さて何を読もうか?
ふと手にとった一冊の本
吉川英治 『宮本武蔵』
私の頭の中にある彼の知識と言えば
“巌流島””剣の達人”…以上
どんな人なんだろう?どんな話なんだろう?
少し巻頭をパラパラめくってみる。

はしがきにこう書かれている
〜京都の桜の画家といわれた故K.U氏は、
 生活苦のはて、一家心中をこころにきめた日、
 たまたまその日の夕刊に、武蔵が浅間山を登る一章を読み
 死を思いとどまったのでしたと、

他にも著名な水泳の選手や、将棋士の方々が
この書のどこかを自信の精進に生かし得たと〜

読みたくなった。

二週間前に読み始め、
お店にいらっしゃるお客様が
くつろぎの時間に私を必要としない時には格好の読書タイム。
暇を見つけては読んでいる。

お店にやって来たウサギさんに
“今、宮本武蔵読んでるんだぁ〜”
と言うと、
“吉川英治の?何巻あったっけ?”
“8巻”

実家の母にも
“今宮本武蔵読んでるんだぁ〜”
”おもしろいでしょう〜
お母さんが、小さかった頃にはマンガも無かったからねぇ〜
宮本武蔵なんかをむさぼるように読んでたわよ。
毎回ワクワクしながらね。
今、どんなとこ?”

周りに読んでる本のことを即答してくれる人たちがいるのはとっても嬉しい。

この宮本武蔵というひと
かなりの男前。
私は軸がしっかりて、意志の強い男の人が主人公の小説が大好き。
過去に思い出されるのは
船戸与一のたくさんの本に出てくる主人公だったり、
檀一雄の”夕日と拳銃”に出てくる麟之介だったり…
武蔵も強い、
何度も何度も死にかけるのだが
その度に強くなっていく。
それは剣の腕が強くなるのではなく精神が。
無駄口を叩かず(叩くことができない)
人から罵られようとも食って掛かっていかない。
ただただ、剣を愛している。
そして人を憎まない。

そしてそこに寄り添う
なんともこころある登場人物たち。
読み進んでいくに連れ痛快。

舞台背景も行ってみたことがある
一乗寺だったり、鴨川のほとりだったり
三井寺だったり、高台寺だったり
あの道を武藏や小次郎やお通さんも歩いたんだなと思うと楽しい。

やっぱり日本のこころ
大和魂は
本当に美しいなと
凛としているなと思う。

私が棒術を楽しんでいるこころには
ただ、男勝りに強くなりたいのではなく
強い彼らのほんの欠片でもいいから
その神髄を覗いてみたいというところにあるんだろうと思う。